タームストラクチャー戦略¶
概要¶
タームストラクチャー(期間構造)戦略は、先物カーブの形状から収益機会を見出す手法である。コンタンゴ(順鞘)とバックワーデーション(逆鞘)の識別、ロールイールドの活用、コンビニエンスイールドの推定を通じて、持続的なリターンの獲得を目指す [1][2]。
理論的背景¶
Gorton and Rouwenhorst (2006) の研究では、バックワーデーション状態にある商品のロングポジションが歴史的に正のリターンを生み出してきたことが実証されている [3]。Keynes の「正常バックワーデーション」仮説に基づき、ヘッジャーがスペキュレーターにリスクプレミアムを支払う構造が、タームストラクチャー戦略の理論的根拠となる [2][4]。
戦略1: コンタンゴ / バックワーデーション識別トレード¶
前提条件¶
複数限月の日足データ
orderbook.json から各限月の現在値を取得可能
実装手順¶
data/orderbook.jsonのcontracts配列から各限月のcurrent_priceを取得する期近 vs 期先の価格差を計算する
期近 > 期先(バックワーデーション)→ 期近のロングポジション
期近 < 期先(コンタンゴ)→ 期近のショートまたはポジション回避
カーブの傾きを月次で追跡し、転換点を検出する
パラメータ¶
パラメータ |
推奨値 |
根拠 |
|---|---|---|
判定限月 |
第1限月 vs 第2限月 |
最も流動性の高い限月ペア |
リバランス頻度 |
月次 |
実証研究の標準期間 [1] |
カーブ傾斜閾値 |
0.5% |
ロールコストを上回る傾斜 |
適用商品¶
商品 |
適合度 |
備考 |
|---|---|---|
金 |
高 |
6限月、流動性が高い |
白金 |
高 |
6限月 |
原油 |
高 |
15限月と最多、カーブ分析に適する |
ゴムRSS3 |
中 |
12限月あるが流動性が限定的 |
データ参照¶
板情報:
data/orderbook.json(contracts[].current_price,contracts[].delivery_month)OHLCV:
data/csv/金_YYYYMM_day.csv(複数限月の日足)
戦略2: ロールイールド戦略¶
前提条件¶
限月ロール時の価格差データ
バックワーデーション環境
実装手順¶
ロールイールドを計算する:
roll_yield = (期近価格 - 期先価格) / 期近価格ロールイールドが正(バックワーデーション)→ ロングポジションで保有
ロール時に期近を決済し期先を新規買建てすることで、イールドを獲得する
ロールイールドの推移を追跡し、転換点でポジション調整する
パラメータ¶
パラメータ |
推奨値 |
根拠 |
|---|---|---|
ロールタイミング |
限月最終日の5営業日前 |
流動性の低下回避 |
最低ロールイールド |
年率2% |
取引コストを上回る水準 |
適用商品¶
商品 |
適合度 |
備考 |
|---|---|---|
原油 |
高 |
15限月、ロールイールドの変動が大きい |
金 |
中 |
コンタンゴが多いが、状況変化時に有効 |
白金 |
中 |
需給逼迫時にバックワーデーション化 |
データ参照¶
板情報:
data/orderbook.json(複数限月のcurrent_price)
戦略3: カーブモメンタム¶
前提条件¶
日足以上の期間データ
複数限月の価格推移
実装手順¶
過去1ヶ月間のカーブ傾斜の変化を計算する
カーブがバックワーデーション方向に傾斜強化 → 買いシグナル
カーブがコンタンゴ方向に傾斜強化 → 売りシグナル
モメンタム戦略と組み合わせて精度を向上させる [1]
適用商品¶
商品 |
適合度 |
備考 |
|---|---|---|
原油 |
高 |
カーブ変動が顕著 |
ゴムRSS3 |
中 |
12限月でカーブ分析が可能 |
金 |
中 |
安定したカーブ構造 |
データ参照¶
OHLCV:
data/csv/原油_YYYYMM_day.csv(複数限月の日足比較)
リスクと注意点¶
カーブの形状は需給の急変で突然変化する可能性がある
ロールコスト(手数料 + スリッページ)がロールイールドを侵食する
低流動性の期先限月ではスリッページが大きくなる
コンビニエンスイールドは直接観測できないため推定誤差が生じる
出典¶
“Term Structure Effect in Commodities”. Quantpedia. https://quantpedia.com/strategies/term-structure-effect-in-commodities
Gorton, G.B., Hayashi, F. and Rouwenhorst, K.G. “The Fundamentals of Commodity Futures Returns”. NBER Working Paper No. 13249, 2007. https://www.nber.org/papers/w13249
Gorton, G. and Rouwenhorst, K.G. “Facts and Fantasies about Commodity Futures”. Financial Analysts Journal, 2006. https://doi.org/10.2469/faj.v62.n2.4083
Erb, C.B. and Harvey, C.R. “The Tactical and Strategic Value of Commodity Futures”. NBER Working Paper No. 11222, 2005. https://www.nber.org/papers/w11222
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